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執筆者の写真Aloha VIP Photo Tour

ハワイのイルカツアーが全面禁止!? について思うこと

更新日:2018年5月16日

こんにちは。ハワイ在住 "水中"フォトグラファーのマルです。


ハワイの人気アクテビティである野生のイルカと泳ぐドルフィンスイムツアーが、来年にも全面禁止になるかもしれない。。。


そんなショッキングな話が2ヶ月ほど前から持ち上がっています。


アメリカ合衆国の政府機関であるアメリカ海洋大気局(NOAA)が、ドルフィンスイムツアーによるイルカへの影響を懸念して規制案を作成しました。


規制ではイルカを守るために50ヤード(45.7メートル)以内に接近することを禁止にするとあります。


そうなれば、イルカを間近に見ることを売りにしているドルフィンスイムツアーは開催できません。


クジラと違ってイルカは小さいですから、ホエールウオッチングのように船上からウオッチングするツアーも迫力がないため恐らく集客できないでしょう。


規制案がそのまま実効となれば、イルカにまつわる観光ツアーは軒並み消滅するかもしれません。


美しく、また愛嬌のあるイルカは老若男女、古今東西の人気者 (PHOTO/Tomohito Ishimaru)
美しく、また愛嬌のあるイルカは老若男女、古今東西の人気者 (PHOTO/Tomohito Ishimaru)


なぜドルフィンスイムが規制されるのか?


イルカは夜間に沖に出て餌となる魚を捕り、昼は沿岸に戻って休む習性があります。


NOAAの見解では人間が近づくことでイルカの睡眠が阻害され、ストレスを与えているとのことです。


もし本当にそうであれば、ドルフィンスイムツアーは辞めるしかないでしょう。


というよりストレスを与えているとなれば、イルカはやがてその海域から消えますので、続けることは不可能となるでしょう。




ドルフィンスイムを続けて欲しい、その理由


まず僕個人の意見を述べるとすれば、ドルフィンスイムツアーは続けてもらいたいと思っています。


野生のイルカと泳ぐ体験は、それは素敵なことです。大人も子供もイルカに出会えたときは皆一様に感動しています。


きっと一生の思い出になるはずですし、野生動物への関心もぐっと高まってくれるはずです。


それにこのツアーに関わる人たちの生活もあります。ツアーがなくなれば多くの人が職を失います。


でもそれだけでは人間のエゴです。冒頭で述べたようにイルカに本当にストレスがかかっているのならば、中止もやむを得ないでしょう。




ハワイにはドルフィンスイムツアーを開催している会社がオアフ島、ハワイ島、マウイ島、カウアイ島の各島に合計10社くらいあります。


その中でも最も業者が集中しているのがオアフ島です。オアフ島のドルフィンスイムは ワイアナエハーバー という島の西側にある港から出発します。僕も雑誌やテレビの撮影で何度もお世話になっています。


もし、イルカがドルフィンスイムによってストレスを受けるのであれば、業者がいちばん集中しているオアフ島から影響が現れるでしょう。


残念ながらイルカと人間はお話ができませんから直接イルカから意見を聞くわけにはいきませんが、実際どうなのでしょうか?




イルカがストレスを受けているか否か、その判断材料のひとつとして僕が思うのが


「ドルフィンスイムツアーは約30年前から行われているが、その間にこの海域のイルカの数は減少していない」という事実です。


これはイルカ船のベテランボートキャプテンから聞いた話ですが、ステークホルダーではない地元の人や漁師もそれは言っています。


イルカとの遭遇率は昔と変わらず高い数値でツアーが開催されています。




本当にイルカがストレスを感じているのであれば、彼らはすぐにその海域を離れるでしょう。


そもそもイルカはエコーロケーションという超音波を使って水中に何がいるかを瞬時に察知します。


彼らが本当に人間と会いたくないと思えば、私たち人間がどんなに泳いで近づこうとしても、かすることさえできないでしょう。


それでも彼らは人間の前に現れて、ときに一緒に泳いでくれます。


ボートと並走するイルカたち。人間にストレスを感じているならばそもそも近寄ってくることはないはず (PHOTO/Tomohito Ishimaru)
ボートと並走するイルカたち。人間にストレスを感じているならばそもそも近寄ってくることはないはず (PHOTO/Tomohito Ishimaru)

むしろハワイのドルフィンスイムはエコツーリズムとしての成功例なのではないか?


僕はハワイに来る前はスクーバダイビングの雑誌を発行している出版社のカメラマンとして13年間働いていました。


撮影で日本&世界中の海で潜ってきましたが、ドルフィンスイムの取材も何度となく行っています。


日本で代表的なドルフィンスイムスポットは、世界遺産に登録されている小笠原と伊豆諸島の御蔵島です。


僕はどちらのドルフィンスイムも取材で経験しています。これらの場所のボートの船長は漁船かダイビングサービスのボートの船長です。


彼らはイルカの動きを熟知しているので、イルカの向かう方向に先回りしてゲストを海に落としてくれます。


ゲストはひとしきりイルカと遊び、イルカが通り過ぎてしまったらまたボートに上がって移動。


そして船長はイルカの前に再びゲストを下ろす、、、ということを何度も繰り返します。


かなり自由に撮らせてくれるので、最後は体がヘロヘロになるほどに、でもそれだけ撮影させてもらえるのでいろいろな絵が撮れたものです。




そんな体験を重ねた僕がハワイに来て初めてイルカ撮影に臨んだとき、実はかなりの驚きを覚えました。


ハワイのドルフィンスイムの船長は非常に厳しいのです。


ガイドより前に出るのはもってのほかだし、イルカに近づくタイミングもかなり慎重に見計らいます。


そして何よりイルカに接せられる時間が短いのです。


日本ではもう飽きるほどにイルカと遊ばせてくれますが、ハワイでは(もちろん状況にもよりますが)1チャンス、2チャンスがザラ。


「全員イルカ見れましたかー? では上がってスノーケリングに行きましょう!」


となり、撮影で訪れている自分とすれば全く物足りなくて「えー? もう終わり??」 と思ったものです。


もちろん状況次第でそれ以上にイルカと遊べるときもあるのですが、イルカにとっても人間にとっても無理せずほどほどのところで引きあげるのです。


カメラマンとしてはシャッターチャンスが少なくなるので時間が短いのは非常に痛いところ。イルカと接せられる限られた時間(わずか数分? ときに秒単位で終わることも)のために1日使ってしまうことになるので、仕事としての効率が悪すぎる。




でも今回のドルフィンスイムツアーの中止問題が持ち上がって改めて考えてみると、「この厳しさが今までイルカを減らさずにやってこれたということにつながっているのかな」と思います。


僕はハワイの何社かのドルフィンスイムツアーを取材していますが、どのキャプテン&スタッフもイルカを非常にリスペクトしています。無理してイルカに近づくなんてことはまずありません。


日本のドルフィンスイムに慣れた僕からすればときに神経質とも思える彼らの態度こそが、これだけ毎日多くのゲストがドルフィンスイムに訪れても存続できている、その要因なのではと思います。


オアフ島のドルフィンスイムは、小笠原や御蔵島とは比べ物にならないくらいのゲストが訪れます。1日で言えば軽く100人は超えて、多いときは200人くらいになるかもしれません。それでもこの環境が維持できているのはすごいことです。


だからむしろ、ハワイのドルフィンスイムツアーはエコツーリズムとしての成功例なのではないかと考えます。




もちろんこのまま際限なく観光客が増えれば影響が出てくる可能性は高く、そういう意味での規制は必要になってくるかもしれません。


でもいきなり「全面禁止」というのは、現状を考えるとあまりにヒステリックな結論と思えてしまいます。



ハワイで見られるイルカはハワイアンスピナードルフィンというハワイの固有種。小型でとても美しいイルカです (PHOTO/Tomohito Ishimaru)
ハワイで見られるイルカはハワイアンスピナードルフィンというハワイの固有種。小型でとても美しいイルカです (PHOTO/Tomohito Ishimaru)

ドルフィンスイムの今後の見通しはどうなの ?


僕はつい最近も複数のドルフィンスイムツアーのボートに仕事で乗りました。


そのときキャプテンやガイドに「実際のところツアー中止の見通しはどうなの?」と聞きました。


その答えは、実は人によりバラバラ。




【ツアー会社 Aのスタッフ】


「かなりまずい状況。来年中にツアーは開催できなくなるかもしれない。何とか全面禁止ではなく、ボートやゲストの数を制限する方向に持っていきたい」




【ツアー会社 Bのスタッフ】


「こういう話は実は定期的にも持ち上がっている。今回もその波のひとつではないか。ひょっとしたらなんらかの規制ができるかもしれないが、全面禁止になるとは思えない」




といった具合。つまり、今のところ将来の状況はよくわかりません。


いずれにせよNOAAの規制案が採択されるかどうかの結論は、まだ1年以上先になるとのことです。


それまではドルフィンスイムのツアーは通常どおり行われますので、ツーリストの皆さんは安心してツアーに申し込んでイルカと泳いで欲しいと思います。





Photo & Text by TOMOHITO ISHI"MARU" 石丸智仁


※本ブログの写真及び文章の転載は一切禁止です




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